2014年12月12日金曜日

自民党大勝は円売り再加速につながるか

 日本のメディア各社の衆院選・情勢報道によると、14日投開票の衆院選で、自民党は単独で300を超える議席を獲得し、公明党と合わせた与党は、参院で否決された法案を衆院で再可決できる定数の3分の2(317)の議席を確保する見込みとなっている。仮に報道通りに自民党・与党が大勝すれば、日本に疎い外国人投資家を中心に、市場関係者の多くは、総選挙の結果をアベノミクスの信認と捉えるだろう。

 ただ、総選挙を通じアベノミクスの信認が確認されたとしても、総選挙後の週明け(15日)の為替市場では、円売りの動きが加速するとは考えにくい。市場オープン直後のドル円は、2年前の衆院選直後と同じように円安方向にギャップをつけてスタートする可能性はあるものの、その後はポジション調整の動きが優勢になるだろうと考えている。

 11日の海外市場では、ドルを買い戻す動きが優勢となったが、ドル円は119円台半ば近辺で伸び悩み。NY市場取引後半には118円台後半に下落するなど、ドル円の上値の重さが目立った。12日の東京市場でもドル円は119円ちょうど近辺で上値が重くなり、取引後半には一時118円台半ばまで反落するなど、ドル買い・円売りの動きが強まる気配は見られない。

 原油先物価格が2009年7月以来となる1バレル60ドル割れに下落し、11月の中国鉱工業生産は前年比+7.2%と市場予想を下振れするなど、世界経済の先行き不透明感は強いまま。日本時間18日早朝の米FOMC結果発表では、声明文で事実上のゼロ金利を「相当の期間(considerable time)」維持するとの文言が削除されるとの見方が強まっているが、実際の声明文を見るまでドル買いポジションの積み増すには慎重にならざるを得ない。19日には日銀・金融政策決定会合や黒田総裁会見も控えており、週前半は、ドル高・円安が進展する場面で、むしろドル買い・円売りポジションを調整する動きが強まるのではなかろうか。

 なお一部報道によると、関西電力の高浜原子力発電所3、4号機が、再稼働に向けて原子力規制委員会による原発の安全審査の合格内定を年内に得られる見通しになったという。原発再稼働に前向きとされる自民党が総選挙で大勝すれば、原発再稼働の動きに弾みがつくとも予想され、原油価格の下落と合わせて、日本の貿易赤字の縮小観測も高まりやすくなる。年明けにも実需面では円売り圧力が後退するとの見方も強まりそうだ。